国が変わればデザインも変わる

パッケージデザインの中でも特に好きなのが牛乳パック。フィンランドに行ったら色々な種類の牛乳を飲んで、パッケージを集めています。2020年のロンドン旅行で行ったスーパーでもやっぱり注目してしまうのは乳製品売り場。そこで発見したのが、フィンランドやスウェーデンでもよく見かけるアルラのミルクパックでした。アーラ(Arla Foods / フィンランド語読みだとアルラ)はデンマークに本拠地を置く会社ですが、2008年にイングマン(Ingman)を吸収したことにより、フィンランドでもヴァリオに次ぐシェアを持つ乳製品メーカーです。アルラ・スオミの前身であるイングマンは、1929年にヴァンターの隣町シポーのイァルマル・イングマン(Hjalmar Ingman)がヘルシンキのマーケットで彼の母親が作ったヴィーリの販売を始めたことから始まりました。その後1971年に彼の息子が会社を設立しヴァリオに次ぐシェアを持つ乳製品メーカーとなりますが、2007年にアルラが30%の株を持つことでアルラ・イングマンと名前を変え、さらにその翌年アーラがすべての株を持つことによってアーラ・フーズの子会社となります。一方アルラ・フーズは、スウェーデンで1915年に創業したアーラとデンマークで1970年に創業したMDフーズが2000年に合併して生まれた乳製品メーカーで、デンマーク、スウェーデン、イギリスが主な市場だそうです。最近は日本でもチーズなどが販売されているので、ロゴを見たことがある人もいるかもしれません。

イギリスの牛乳はプラスチックボトルが主流なようで、この写真の紙パックは通常の牛乳ではなくラクトースフリー(乳糖なし)のタイプ。iPhoneの写真フォルダでこの写真を見つけて、そういえば、同じアーラブランドでも国が違えばデザインも違うのは当たり前として、どれくらい違う、また共通点はあるのかが気になり調べてみました。

ロンドンで見かけたラクトースフリーミルクの他国バージョンを検索したら、デンマークは同じデザイン。フィンランド、スウェーデンは全く違いました。アルラ・スオミ(フィンランド)は2014年にパッケージの大型リニューアルをしていて、牛乳、クリーム、ピーマなどの基本デザインが統一されていて、色や模様で種類が判別できるようになっています。例えば、このパッケージ無脂肪のラクトースフリーは薄い水色の波波模様。これが低脂肪だと青になり、ピーマだと黄緑、ラクトースが入っているものだと波波部分が真っ直ぐなラインになります。

続いて、比較してみたのはオーガニックの低脂肪乳。これは、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、オランダで販売されています。ベースはクラフト紙っぽいベージュ。フィンランド、デンマーク、オランダは一本線で描かれたイラストをメインとしたデザインですが、スウェーデンだけは全く違います。アルラのロゴの上のモクモク模様はオーガニックだけでなく、ほとんどのパックにデザインされていました。また、色にも特徴が。今まで色々なところでフィンランドの牛乳パックの色分けについて語ってきましたが、これは他の国でも使われている方法のようです。ただし、対応する色は異なります。

Finland(Maito)
0% Rasvaton maito:水色
1% Ykkös maito:濃水色
1,5% Kevyt maito:青
3,5% Täys maito:赤

Sweden(Mjölk)
0,5% Lättmjölk:水色
1,5% Mellanmjölk:緑
3,0% Färsk standardmjölk:赤

Denmark(Mælk)
0,1% Skummetmælk:黒
0,5% Kærnemælk:黄緑
1,5% Letmælk:水色
3,5% Sødmælk:青

Nederland(Melk)
0.5% Karnemelk:赤
1.5% Halfvolle melk:水色
3.6% Volle melk:青

旅行者がそれぞれの国を周遊する場合、かなり混乱しそうですね。日本の成分無調整牛乳は乳脂肪分を3%以上含んでいるので、いわゆる牛乳を飲みたいときは、フィンランドとスウェーデンでは赤、デンマークとオランダでは水色のパッケージを探す必要があります。ちなみにイギリスは水色です。

旅行中はなかなか1リットルパックを買うこともないと思いますが、どの国でも小さいパックが売っているので試しやすいです。フィンランドには何度も行っているのに、スウェーデンやデンマークは一度しか訪れたことがないので、また海外旅行に行ける日が来たら北欧周遊も楽しそうだなあ。ノルウェーやアイスランドのパッケージ事情も気になります。